アジア各国の発展と学会活動の意義

 アジア教育史学会では、2011年7月に創立二十週年を迎えて、新たな歩みを模索してきた。そうした歩みの一つが、設立二十週年を記念した『アジア教育史学の開拓』(アジア教育史学会発行)の出版である。会員は三十週年に向けて、力強く歩を進めている。

 しかし会員の前にたち開る山は、高く険しい。強い意志をもって、取り付いていかないと、転がり落ちてしまう。言うまでもなくアジア教育史の研究には、教育学・歴史学の修錬を積むことが少なくとも必要である。また研究テーマによっては、他の学問領域の知識・成果を駆使する必要もある。さらに言語的にも、多様な言語を駆使しないと研究できないという困難もある。特に前近代の研究には、欧米の言語だけではどうにもならない。アジア教育史の研究は、幅広い知識や複数の言語を駆使する能力が要求されるが、その成果はアジアの人々や国々を理解していく上で、何にも代え難いものであろう。会員はこうした困難な研究に取り組んでいる。

 近年世界は急激に変化して来ている。中でもアジアの後発国と言われた国々の変化は、目を見張るものである。韓国、台湾、中華人民共和国、タイ、シンガポール等の国々では、日本企業と互して戦える企業、日本企業より勢力の強い企業などが出現してきている。こうした国々へは、日本人が大勢進出しているが、フィリピン、インドネシア、インドなどにも、日本人が多く進出して活動している。従って、これらの国々を中心に、その他のアジア諸国のことも含めて、各国の理解を深めて行くことが緊要な課題となってきている。

 アジア諸国の教育史研究は、各国の政事・経済・文化等々を理解していく上で、大きな役割を果たすものである。また最近の香港・韓国・シンガポール等の学校教育は、日本の学校教育より成果があがっていると言われている。アジア諸国の学校教育はその在り方の点でも、日本人が研究すべき課題となってきている。以上一瞥しただけでも、アジア諸国の教育史研究の必要性は高まってきていると言える。アジア諸国を理解する方途として、各国の教育問題から接近することも可能である。この分野に関する研究にぜひ多くの方々の参加を望みたい。

会長 古垣光一